旧家にまつわる因縁めいた物語と、怪盗対探偵の痛快娯楽の融合という、言うなれば金田一(横溝)と明智(乱歩)を足して2で割って、座長の趣味を振りかけて宝クジで当たりを引いたような作品(なにそれ?)。大正時代ということで、浅草十二階や大震災などをうまくストーリーに取り入れ、ロープを使った浮遊(怪盗は気球で空へ逃げねばならないからだ!)や、崩壊するセットなど、舞台ギミック面へのコダワリが強く出た作品になっている。ちなみにこの公演、脚本が完成せず、小屋入り後の稽古でラストシーンが決定したという、かつてないギリギリっぷりだったとか。